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それぞれのこだわりを “The Grave” : 2025.05.21

皆様、こんにちは永田です。
すっかり暖かくというか昼間はかなり暑くなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は、5月16日にリリースした2025年春夏コレクションの新作 「Grave」 シリーズをご紹介します。
シリーズ名のGrave(グラーヴ)とは、フランス語のスラングとして「めっちゃ」「超」「本当に」のような意味で使われています。


企画の背景 — 過去の人気シリーズからの再構築

話は少し遡りますが、2024年春夏の30周年記念「30th Anniversary Series “Archives” 」シリーズを企画する際、スタッフに「どのモデルを復刻すべきか」とヒアリングしたところ、採用には至らなかったものの、多くのスタッフから要望があったシリーズがありました。

それが2009年春夏コレクションの「BACK」シリーズです。

リリース当時 6SKU で展開し、フロント全面にベロア素材、本体には高機能な防水生地(ナイロン1680dオックスに TORAY Dermizax をラミネート)を使用。内装には目を引く赤いターポリン生地を用いるなど、シンプルながら大胆なデザインが特徴でした。

当時の master-piece はオールブラックの商品が少なく、お客様にも人気でしたが、スタッフにも愛用者も多かったシリーズです。レザーや太番手の本体生地、それに内装のターポリン生地や金属パーツを使用したことで「No.01220 メッセンジャーバッグL」においては2,500gを超える、かなりの重量級になってしまいました。当時はとても大きいサイズのメッセンジャーバッグが流行っていたこともあり、より重さが目立つ結果となったのです。

この経験と反省を踏まえ、様々な素材を組み合わせた「BACKシリーズ」を参考にしながら、「Graveシリーズ」の企画をスタートしました。


素材選びの旅

デザインと機能性の融合

カラー展開 — 個性を表現する2色

最後に


素材選びの旅

1:レザー素材の探求

まずは素材探しから。デザインの構想には大きな面で使えるベロアが必要でした。
master-pieceでも使用実績のあるベロアを出発点に、BASE大阪(自社大阪工場)のサンプル師や裁断師と何度も相談しながら検討を重ねました。

表現したい形状に合わせてレザーにはしなやかさが必要で、今まで使っていたものでは少し不向きだと判断。多くの革屋さんからベロアを取り寄せ、サイズが大きく原皮の状態が良いものを厳選しました。さらに繊維の細かさも吟味し、原皮にオイルを絡めて鞣すことである程度の撥水性があるベロアレザーに仕上げています。銀層がなく通気性に優れながらも、厚みとコシを持たせた温かみのある独特の表面に仕上がりました。
※ベロア部分には、市販の起毛皮革用撥水スプレーを定期的に使用することで、撥水効果を与え、水や汚れからの保護効果が高まるのでオススメです。

付属に使用するレザーには、定番でよく採用している3M社の SCOTCHGARD® 加工を施した厚みのある防水レザーを選びました。

2:本体素材 — 3レイヤー構造のオリジナルファブリック

本体素材には、INVISTA社に別注している CORDURA® を使用した master-piece オリジナル3レイヤーファブリック「MASTERTEX-09」を採用。見た目が「BACKシリーズ」の素材に似ていることから、初めから決めていました。

「BACK」のナイロン1680dオックスと比較し、経糸は同等の1680dですが、緯糸には少し細い840dのCORDURA® Hollofil AIR™ Fabric(中空糸)を使用することで20%以上の軽量化することができました。強くて軽量な生地の裏面にPUコーティングを施し、特殊透湿防水フィルムL-VENT®をラミネート加工。さらにトリコットナイロンを貼り合わせた独自の3レイヤー構造で、耐水性を高めています。

3:内装素材 — 機能と重量のバランス

内装には、強度をそこまで必要としない部分や、厚みが出て縫製が難しい部分には 210dナイロンオックス、強度やハリが必要な部分には 420dナイロンオックスを使い分け、製造工程とバッグ自体の重量を考慮しました。

もちろん、荷物の視認性が良く、汚れが目立ちにくいキャメルカラーのオリジナル生地です。

4:「m-strap 2」機能開発 — 快適さの追求

前回の反省を踏まえ軽量化を目指しましたが、レザーや金属パーツ、丈夫な芯材の使用により、どうしても重量は増します。そこで、重さがあっても快適に背負える方法を「m-starp」の経験を活かして追求しました。

今回初めて採用したのは、ナイロンテープの中にゴムを一緒に織り込んだ蛇腹テープ(特許技術)「m-strap 2」です。テープ自体のオリジナル性を出すため、ブランドカラーのイエロー・ポリプロピレン糸、ホワイト・ポリプロピレン糸、ブラック・ナイロン糸を組み合わせました。

この「m-strap 2」と後述する「5層構造のショルダーパッド」の開発には、本当に苦労しました。m-strap 2は、理想の伸度やテンションに近いサンプル収集から始め、サンプル製作のために織機をセットするだけでも膨大な時間と労力が掛かります。テスト&エラーを繰り返し、他の製品サンプルや生産の合間を縫って、テープ工場の方に無理を聞いていただきながら、何とか完成させていただきました。

「伸縮疲労試験」では驚くべきことに-0.7%とほぼ変化がなく、むしろ少し縮むという結果に。「肩ひもの取り付け強度試験」でも419N(約42.7kg)という十分な強度を実現しました(ちなみに、これはテープではなく縫製部分が先に切れてしまうためです)。

5:5層構造のショルダーパッド — 20種類以上の試作を経て

ショルダーパッドのクッション材には、軽量で弾力のあるEVA樹脂と、寝具やカーシートにも採用されている旭化成アドバンス社のフュージョン®を使用。フュージョン®は2枚の編地間を弾力のある糸でつないだクッション性に優れた画期的な立体編物で、筋交構造により形態安定性も抜群です。

さらに身体に一番近い部分にはNASAのために開発された温度調節素材アウトラスト®と、編み目の細かい柔らかいダブルラッセルメッシュを配置しました。2009年には思いつかなかったこの構造により、クッション性だけでなく、様々な体型の人にフィットする快適さを実現しています。

このショルダーパッドだけでも、中に入れるクッション材の種類や厚み、重ね方など、合計20種類以上のサンプルを作って検証しました。メイド イン ジャパンさらに自社工場だからこそ、利害関係なく職人と納得いくまで何度も話し合い、サンプル作りができる環境に本当に感謝しています。さらに量産時の生産工程まで考慮し、最も美しく効率的な製造方法も検討していただきました。


デザインと機能性の融合

No.03174のミニショルダー以外の全モデルは2層構造となっており、ラップトップやタブレットをメインルームとは別のスペースに収納可能。

バックパック、デイパック、メッセンジャーバッグは、ラップトップとタブレットの同時収納にも対応しています。メイン収納部はファスナーにスライダー(引き手)を4つ配置し、上からだけでなく横からも素早くアクセスできる工夫を施しました。

内装には大小様々なポケットを配し、ビジネスバッグ並みかそれ以上の収納機能を備えています。

■ バックパック No.03170 — 収納の王様

No.03170バックパックは、外装ポケットを合わせると合計21箇所もの収納スペースがあり、あらゆるシーンで活躍します。

両サイドの立体ポケットは左右ともラウンドファスナー・Wファスナー仕様により前後から開閉可能。

さらに中にはストレッチメッシュポケットも備えています。右側には背負ったままでも開閉できるファスナーポケット、左側には携帯電話の収納に最適なアイレット付きベルクロポケットを設けました。

■ デイパック No.03171 — 日常からビジネスまで

デイパックはすっきりとしたシルエットとサイズ感に仕上げ、日常使いはもちろん、職場にもよりますがビジネスシーンにも対応できる設計です。
私感ですが、一番バランスの取れた使い勝手の良いモデルだと思います。

■ メッセンジャーバッグ No.03172 — 独自シルエットの開発

メッセンジャーバッグは大きくなりすぎないようサイズ感に配慮し、フラップレスデザインを採用。見た目と使いやすさを両立しました。

サイズや形状の違う前後胴を曲線で結ぶ独特なシルエットを実現するため、型紙作成に最も時間がかかりました。ショルダーパッドは5層構造の新仕様で左右入れ替えも可能な仕様です。

ショルダーパッドのバックルには、貴重な MADE IN JAPAN の金属製オリジナルを採用し、見た目のインパクトだけでなく、唯一無二の存在感を演出しています。もちろんサブストラップも装備。

■ ショルダーバッグ No.03173 — 出張や旅行のセカンドバッグに

ショルダーバッグは、世の中で一番実績のあるサイズを2層構造で、「5層構造のショルダーパッド」を採用。普段使いはもちろん様々なシチュエーションに対応するので、ひとつ持っていると便利なサイズ感のバッグです。
上記4型は全てスーツケースのキャリーバーにセットアップでき、出張や旅行にも最適な仕様になっています。

■ ショルダーポーチ No.03174 — 必要最低限で不可欠な収納に

ミニショルダーは持っていることが当たり前のスマートホンを便利に収納でき、外部からの衝撃を和らげるウレタン材が入ったポケットを装備し、下部のアイレットで着信音も聞こえやすくなっています。長財布は入りませんが、コンパクトウォレットやワイヤレスイヤホンなどを収納して身軽に行動するのに最適です。


カラー展開 — 個性を表現する2色

ブラックカラーは全てをブラックで統一し、シックで高級感ある仕上がりに。

一方、ネイビーカラーはベロアにキャメル、付属レザーとナイロンテープにカーキ、金属パーツにはニッケルメッキを用いた master-piece らしいマルチカラーに仕上げました。


最後に

その他にも説明しきれないほど「こだわり」を詰め込んだ「Grave」シリーズは、それ相応の価格帯のカジュアルシリーズとなっています。

しかし、見る人(特に製造関係者の方)に見ていただければ、決して高いだけではなく、日本製でここまで作り込まれた商品がいかに稀有な存在であるか、そして master-piece ならではの価値があることをきっと感じ取っていただけると信じています。

ぜひ直営店、全国の master-piece取扱店オンラインストアで「Graveシリーズ」を手に取って、そのこだわりを実感していただければ幸いです。ショップスタッフも熱く語ってくれると思います。

ご来店できない場合はホームページでじっくりとご覧ください。いつもより画像多めだそうです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

永田

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