FROM MSPC Team

羊の皮をかぶった狼 : 2023.11.30

皆様、こんにちは。
大変、ご無沙汰しております永田です。
前回はmilestone x master-pieceの記事に、個人SNSより少しコピペされましたが、自身での投稿は数年ぶりとなります。

2023 S/S COLLECTIONより“explorer”シリーズのご紹介となります。
恐らく長文になりますので、興味ある方、お時間がある方、仕方なしでもお付き合いいただける方、ぜひ一読いただければ幸いです。

唐突ですが、100年以上の歴史を持つアメリカブランドのバッグが格好いいなと思いを馳せながら、この“explorer” シリーズを企画し始めました。

無骨なデザインや素材感が好きな方も多いと思います。
ただ生地や革もゴツくて丈夫な分、重くて収納部分もあまり気の利いたものが少ない印象だったので、
そこを改善しmaster-pieceらしい機能性を持たせながら、飽きのこないシンプルなデザインを目指しました。

簡単?に言うと「羊の皮をかぶった狼」です。
見た目はオーセンティックでシンプルなデザイン、でも中身はいい感じといった具合です。

まずは本体生地です。コットン等の天然素材も検討しましたが、アジとも言える色の退色や変色は、今回の企画でトータル的に合わないと思い却下。
そこでこれまでにも付属素材などで使用してきたインビスタ社の1680d CORDURA Ballistic® ナイロンをメインファブリックに採用しました。

この1680d CORDURA Ballistic® ナイロンは、一般的なナイロン生地に比べ、摩擦強度、引裂き強度、引張り強度など、全てにおいて優る非常に耐久性の高い66ナイロンをさらに強くするために、2本の糸を1本に撚糸したものを高密度で織り上げたCORDURA®の中でも最強クラスの強度を誇る生地であり、
見た目のゴツさに対して軽量なのでバッグに最適な素材のひとつです。
無骨なイメージもありつつ、天然素材にはない軽量性や強度が 今回の “explorer” シリーズには最適な生地かと判断しました。

ちなみに1680dのd(デニール)とは、繊維の太さを表す単位のことで、9,000メートルという一定の長さの質量を基準に太さを表しています。
9,000メートルで1グラムの糸=1デニールとなっています。つまり長さ9,000メートルで1680gの糸を使用していることになります。

一般的なナイロン製のバッグで使用されている生地は420d程度が多い中、1680dしかもCORDURA Ballistic® となれば、かなりの強度になります。

レザーは、国内で最高品質と言われる北海道産の原皮に、革らしい風合いとコシを保ちながら柔らかさも引き出す「コンビネーション鞣し」で仕上げたカウレザーを使用。

北海道産の原皮の特徴として真夏は30℃以上、冬は氷点下20℃以下と言う厳しい寒暖差のある土地柄のため、そこで育つ牛の原皮は、きめが細やかで皮厚の原皮になります。

それをベースにオイルを吹きつけて馴染ませた後、ミリング加工(革を揉み込んでシボとツヤを出す)を施し、ほぼ染料のみで染め上げています。
さらに最終工程でオイルを吹き付けることによって、しなやかさのあるタッチ感と染料染めならではの透明感、独特なシボや血筋など革らしいナチュラルな表情も楽しめる革に仕上がっています。

風合いやコスト面においても、本当にいいバランスのレザーができ上がりました。

ファスナーはYKK 社の金属ファスナーのような独特の輝きと樹脂の軽さ・耐腐食性を併せ持った METALUXE® Tough を使用しています。

このファスナーは金属ファスナーと比較し約55%軽量化を実現しており、バッグの中でも比較的、本体の重さに影響するパーツなので、見た目が良く軽いなら今回の企画に使わない手はなく、摺動においても軽く使用感も抜群です。

このファスナーはコスト面(少しお高いです)や経年変化がどうとかなければ、バッグに最適なファスナーだと思います。引き手は最も使用頻度の高いmaster-pieceオリジナル。
後述しますが、フロントポケットのみ剣先デザインのレザー引き手を取り付けています。

あまり目立たない内装に使用しているファスナーは、一般的なコイルファスナーで、摺動やコスト面、耐久性で信頼できます。

内装の生地は、master-pieceオリジナルのキャメルカラー。
中に入れた物が見やすい、比較的汚れが目立ちにくいというメリットがあり、また他であまりないカラーということで、約10年前に開発、使用しています。

また420dと210dのナイロンオックスを併用しているのですが、しっかりさせたいポケット部分は420d、本体生地に面している部分には210dを使用しています。
微々たる違いになるのですが、少しでも軽く作りたいのと、“explorer” シリーズはデザイン上、生地が重なる部分も多いため、職人さんが少しでも楽に作れるように考慮しています。
この工夫が量産時のスピードに影響し、これがコストにも繋がるだけでなく、個体差も出にくくなります。

バックパックのショルダーストラップには、身体に掛かる荷重の負荷を軽減する “m-strap” というオリジナル機構を装備。
ストラップの根本に高強度のストレッチテープと伸びないナイロンテープの二重構造にすることで、伸度100%まで伸びきらない状態にしています。
この伸縮が背負った時に身体にかかる荷重の負荷を軽減してくれます。

また重さを軽減させるもう一つの要因が「身体にフィットさせる」ことです。
バックパックを使われる方は経験があるかもしれませんが、ショルダーストラップの長さをぐっと締めて背中の上部で背負うと重さが軽減されるように感じます。
簡単にいうと、これが身体にフィットしている状態なのですが、m-strapはストレッチテープにより根元がフレキシブルに可動する形状となっており、体型を問わず様々な方の身体にフィットします。
できればショルダーストラップは短めでセッティングしてもらえればより体感できると思います。

これに使用しているストレッチテープですが、master-pieceのブランドカラー(ブラック・イエロー・ホワイト)で表現しており、カケンテストセンターにてデマッチャー試験機を使用し、以下の内容で検査しました。

・試験片幅 : 全幅
・つかみ間隔 : 10cm
・伸度 : 100%
・繰返し回数30,000回
・試験速度 : 200回/分
・標線間距離 : 10cm
前処理:ジャングル処理70℃ × 90% RH 14日間
伸縮直後と、2時間放置後(環境下20℃× 65% RH)に標線間距離を測定し残留伸び率算しています。

検査をした結果、残留伸び率が試験直後で2.5%(2.5mm)、2時間後(ゴムなので時間が経つと少し戻ります)2.0%(2mm)で、”m-strap”として使用している長さはそれ以下の長さになりますので、ほぼ伸びないことがわかりました。
バッグとして取り付け強度の検査(JIS L1096 A法準用正)では、逆方向(検査結果が低くなる)に引っ張り、588N(約60kg)という結果になり、しかもストレッチテープではなく、それを止める縫製糸が切れました。

検査時は30番手の縫製糸を使用していましたが、本生産時はこれを20番手の糸(糸の太さは番手で表現し、数字が小さくなるほど太くなります。)に変更し、さらに強度は上がっています。

先に素材の話をしましたが、企画を進める上で使いたい生地や革等の素材からインスピレーションを受ける場合と、作りたい形が決まってから素材を探す方法がありますが、今回の場合、実は後者になります。生地やレザーやパーツについては、普段から様々なモノを見るようにしており、展示会に行ったり取引先の方にも提案していただけたり、イメージや似たモノを伝えて探していただいています。

ないものはゼロから作ったり、もちろん即採用する場合もあり、何年も前に提案してもらったモノ、見つけたモノを採用する場合もあり、昔だったら絶対に使わないモノも年齢と経験を重ねることで使えるようになってきました。

1680d CORDURA Ballistic® ナイロン × レザーの組み合わせ、そういった意味では結果、master-pieceの中で特に真新しいものはなく、逆に言うと今後もしっかり定番として使っていけるモノを採用した形となりました。

ようやくデザインの話になります。

仕事でも使えて、できれば普段も使いたい
外装はできる限りシンプルな方がいいので、生地以外のナイロンテープの配色もレザー以外は同色系(本体カラーブラックはオールブラック)にしています。金属パーツのメッキは艶消しのブラックで、恐らくmaster-pieceの中でもかなりシンプルにデザインのシリーズになっています。

その代わり内装にこだわり、様々な収納を設けました。
バッグの中身を入れ替えると、あると思った物がなかったり、忘れ物の原因になります。
私は基本、筆記用具や文庫本、エコバッグ、折り畳み傘、モバイルバッテリーなど、様々なモノを常にバッグに入れて持ち歩いています。

NO.43450 バックパックですが、このフロントの収納はファスナーを長く設定しているので、開閉口も広くモノの出し入れがしやすくなっています。
仕切りのついたポケットもあり、細々したモノもスッキリと収納できます。
鍵もカラビナに付けることでどこに収納したかが一目瞭然。A4サイズのファイルや折り畳み傘も十分に入ります。

メイン収納部。たまに仕事でラップトップやタブレットを持ち運ぶ時に両方のスペースがあったら便利かと。ちなみに Macbook Pro 14” とiPad 10.2” をケースなしで前後のポケットに収納しています。

このシリーズの特徴となっているのが、メイン収納部の下に設けた仕切り。
もちろん荷物はバッグの下に溜まります。その下の部分に仕切りを入れることで、前後で別のモノを入れてもゴチャつかない仕様になっています。

画像のようにファスナーを全開にするとわかりにくいですが、例えば仕切りより前に入れた書類などを横から楽に取り出すことができます。
なおこの仕切り部分にもストレッチメッシュのポケットがついており、メッシュが細かいのでわかりにくいですが、Macbook ProのACアダプターとケーブル、Magic Mouseを収納しています。
生地が伸びるので、もう少し他のモノを入れることも可能です。

メイン収納の前胴側にはファスナー式メッシュポケットがついているので、こちらにも細々したものが収納できます。
ポケットはあえて浅めに設定しているので、メインに入れたものと干渉しにくいようになっています。
こちらのメッシュは、ストレッチ機能はないものも少し粗めになっているので、中に入れたモノが見えやすくなっています。

フロントの両サイドには、電車などでバッグを前持ちした時に、自身の洋服のポケットの位置に来るようにポケットを設けています。
これはそれぞれ独立したポケットが両端まであり、片側に文庫本、もう片側に財布やスマートフォン等を収納することができます。小さめの折り畳み傘なら収納可能だと思います。

あえてここのファスナーにのみ剣先デザインのレザー引き手をつけており、これはバッグを前持ちした際に、引き手を目視せずアクセスし、ファスナーを開閉できるようになっています。

個人的には生活感?があり過ぎて、あまり好きではないのですが、やはりあると便利なサイドポケットは650mlのペットボトルも収納可能
最近は大きなペットボトルが増えてきたので、きっとサイドポケットに入らないバッグもあるかと思います。

背胴にも財布の収納に最適なファスナーポケットを装備。
やはりこの位置がセキュリティ的にも安心かと。

NO.43450 バックパックとNO.43451 トートリュックのみになりますが、背胴のパッド部分は本体から浮かせて取り付けているため、画像のようにショルダーストラップを一時的に収納したり、出張や旅行時に使うスーツケースのキャリーバーに通すこともできます。

またショルダーストラップのテープ部分には余ったテープがタブつかないようにウェブキーパーを装備。
テープエンドの方へスライド・調整してお使いください。

このようなパーツもロゴだけでなく、金型を作成しオリジナルのデザインになっています。
先程、説明したのウェブキーパーをこの金具までスライドさせると、長さの調節がしにくくなるので注意です。
またショルダーストラップを長めにしてお使いの方でテープが滑る場合は、逆にこの金具までウェブキーパーをずらすことでテープの滑りが軽減します。
でも長くしすぎるのは、少しだらしない印象があるののとバッグが揺れるなどの理由で、あまりおすすめはしません。

この調子で全型、説明するつもりでしたが、さすがに時間も掛かってしまい・・・ 今回はNO.43450 バックパックのみになります。

※画像は全てサンプルを撮影しています。量産品と多少の違いがある場合がありますので、予めご了承ください。

この記事はリリース後間も無く投稿するはずでしたが、ぐずぐずしている間に店頭やオンラインストアから無くなってしまいました。
すぐに追加生産を掛けましたが、在庫がないものを紹介しても用意ができない状態で・・・

ようやく全型全色、再入荷しましたので、ぜひ直営店、全国のmaster-piece取扱店様やオンラインストアでチェックしてください。

長文・駄文失礼いたしました。最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
次回は、今回チラっと写った私物をライトに投稿する予定です。

永田


explorer バックパック
No.43450
BLACK/KHAKI/NAVY
42,900yen (taxin)


explorer 2WAYバックパック
No.43451
BLACK/KHAKI/NAVY
41,800yen (taxin)


explorer デイパック
No.43452
BLACK/KHAKI/NAVY
36,300yen (taxin)


explorer 2WAYトートバッグ
No.43453
BLACK/KHAKI/NAVY
37,400yen (taxin)


explorer ボディバッグ
No.43454
BLACK/KHAKI/NAVY
24,200yen (taxin)